イギリス英語とアメリカ英語の違いで旅行者が実際に困るのは、単語だけです。発音の違いは「聞き取りにくい」ことはあっても意味は通じますし、文法の違いに至っては旅先でまず問題になりません。困るのは bill と check、lift と elevator のように、知らないと会話が止まる語——それも数えるほどしかありません。このページは、旅で本当にぶつかる語だけを絞って並べ、そのうえで「なぜ分かれたのか」までを扱います(2026年8月時点)。
旅でぶつかる単語 — これだけ知っていれば足りる
順番は旅の時系列です。上から順に、空港・街の移動・宿・食事・買い物で出てくる語を並べました。
| 場面 | 🇬🇧 イギリス | 🇺🇸 アメリカ | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 移動 | underground / tube | subway | ★ロンドンで subway と言うと地下道を指されることがある |
| 移動 | return (ticket) | round trip | 片道は single(英)/ one-way(米) |
| 移動 | petrol | gas | レンタカーの給油で使う |
| 移動 | motorway / car park | highway / parking lot | ナビの表示語が変わる |
| 宿 | lift | elevator | 宿で最頻出 |
| 宿 | ground floor → first floor は2階 | first floor が1階 | ★階数が1つずれる。詳しくはホテルの英語 |
| 宿 | reception | front desk | どちらでも通じる |
| 食事 | bill | check | 会計を頼むときの語。レストランの英語 |
| 食事 | starter | appetizer | メニューの見出し語 |
| 食事 | chips(フライドポテト) crisps(袋菓子) | fries chips | ★chips が指す物が逆。英で chips を頼むと熱いポテトが来る |
| 食事 | takeaway | takeout / to go | 持ち帰り |
| 食事 | aubergine / coriander | eggplant / cilantro | メニューで詰まりやすい野菜・香草 |
| 買い物 | queue | line | 「並んでいますか?」= Are you in the queue?(英) |
| 買い物 | chemist | drugstore / pharmacy | 薬を買う場所 |
| 買い物 | cash machine | ATM | ATM は英でも通じる |
| 買い物 | trousers / jumper / trainers | pants / sweater / sneakers | ★英で pants は下着を指す |
| 設備 | toilet / loo | restroom / bathroom | ★米で toilet は便器寄り。restroom が無難 |
| その他 | holiday(休暇) | vacation | 米の holiday は祝日 |
| その他 | rubbish / flat | trash / apartment |
★を付けた4つ——subway・階数・chips・pants——だけは、知らないと誤解が起きる種類の違いです。残りは知らなくても文脈で通じます。当サイトのイギリスガイドでも、bill や queue のようにアメリカ英語と違う語彙に戸惑う場面が意外とある、と書いています。
発音の違い — 3つ知れば聞き取りが変わる
発音の差は膨大にありますが、旅の聞き取りに効くのは3つです。
1. 語末や母音の後の R を、イギリスでは読まない
car・park・water の R が、標準的なイギリス英語では発音されません(「カー」「パーク」「ウォータ」)。アメリカ英語では舌を引いてはっきり R を鳴らします。日本語話者にとってはイギリス式のほうがカタカナに近く、聞き取りやすいことが多い違いです。R そのものの作り方は発音ガイドで口の形から確認できます。
2. bath・dance の「ア」が違う
イギリス(南部)では bath・dance・can’t が「バース」「ダーンス」「カーント」に近い長い音、アメリカでは「バス」「ダンス」「キャント」に近い音になります。can’t が「カーント」に聞こえて別語だと思う——これは実際によくある取り違えです。
3. アメリカでは t が d のように弾ける
water・better・city の t が、アメリカ英語では軽く弾かれて「ワラ」「ベラ」「シリ」のように聞こえます。知っていれば一発で分かり、知らないと永遠に分からない類の違いです。イギリスでは t をはっきり出すか、ロンドンの口語では飲み込みます。
ほかに schedule(英「シェジュール」/米「スケジュール」)、advertisement(英は真ん中に強勢/米は前寄り)など単語ごとの差もありますが、旅では気にしなくて構いません。どちらで言っても通じます。
文法の違い — 旅では困らない
教材でよく取り上げられますが、旅行者が困る場面はほぼありません。知識として押さえるだけで十分です。
- have got / have — Have you got a table?(英)/ Do you have a table?(米)。どちらも通じる
- 現在完了と過去形 — I’ve just eaten.(英)/ I just ate.(米)。意味は同じ
- 集合名詞 — The team are…(英)/ The team is…(米)
- 週末 — at the weekend(英)/ on the weekend(米)
- 綴り — colour / centre / organise(英)、color / center / organize(米)
なぜ分かれたのか
綴りの差には作った人がいます。アメリカの辞書編纂者ノア・ウェブスターが、独立後の国に独自の書き言葉を持たせようと綴りを整理し、1828年の『An American Dictionary of the English Language』でそれを定着させました。colour → color、centre → center はこのときの合理化の産物です。「発音どおりに、短く」という方針が、いまも米式綴りの性格として残っています。
発音のほうは逆で、変わったのはイギリスのほうです。R を読まない話し方(非ローティック)は18〜19世紀のイングランド南部で広まったもので、それ以前の英語は R を読んでいました。アメリカ英語は古い形を保ったほうで、アイルランドやスコットランドの英語も R を読みます。「アメリカ英語は崩れた英語」という言い方をときどき聞きますが、少なくとも R に関しては逆です。
語彙の差の多くは物のほうが後から来たことによります。鉄道・自動車・電話は、英米が別々に名前を付けた時代の産物です。だから移動と設備の語に差が集中していて、あいさつや基本動詞にはほとんど差がない——これは旅行者にとって朗報です。
どちらを話せばいいのか
混ぜて構いません。英語圏の人は両方に日常的に触れていて、どちらを使われても違和感を持ちません。ロンドンで elevator と言っても通じますし、ニューヨークで queue と言っても通じます。統一しようとして口が止まるほうが損です。
ただし前掲の★4つ——subway・階数・chips・pants——だけは、通じないのではなく「別の意味で通じてしまう」ので、行き先に合わせて頭に入れておいてください。困るのはいつも、通じなかったときより間違って通じたときです。
なお非英語圏では、この差はほとんど問題になりません。英語が通じる国・通じない国の一覧で見たとおり、非英語圏で英語を使う人は両方が混ざった英語を話します。英米差が実際に効くのはイギリスとアメリカを旅するときです。
場面ごとのフレーズは場面別フレーズ集に、注記として英米差を書き添えてあります。出発前の仕上げには早見表をどうぞ。
本ページの調査時点は2026年8月です。英米差は地域差・世代差も大きく、ここに挙げたのは「標準的とされる形」です。